難攻不惑

 水曜日の職場は、英語母語話者の先生方であふれている。大袈裟かもしれないが、そう思えるほどに恐怖を感じているのは事実である。なぜかというに「英語怖い」なので、実際の人数よりも3割り増しの気分。
 中学、高校の6年間、ネイティヴによる英語教育を受けはしたが、修得するどころか恐怖心だけが残され現在にいたる。語学センスなきこと比類なし、なのである。
 職場のはなしにもどると、英語母語話者だって語学センスのない人もいる。これは先生方のなかに日本語がからきしの方がおられるので確認済みである。ただ、どちらもペラペラ、「なんじゃこりゃ」と方言まで使いこなしてしまうほどの猛者もいる。カナダ出身と聞くその猛者に、今朝、「レディー・ファーストだからどうぞ(もちろん、英語で)」といわれ、先に控室へ入るよううながされた。「遠慮しい」ゆえに固辞、先に入室してもらったのだが、気を悪くされなかっただろうかと後悔することしきり。
 そもそも「女性だから」という理由のみで特別扱いされることに、したり顔で対応することはできない。たとえそれが当方に有利なことであったとしても、なんとなく抵抗を覚えてしまう。そういう人だっているのですよ、と、相手に説明できるような語学力もないので、意味もなく笑って誤魔化した。
 あの時、「年功序列だからどうぞ(もちろん、英語で)」といわれていたなら、もしかしたらおとなしく聞き入れたかもしれない、不惑間近の夏の朝。