盂蘭盆会

 京都の主だった和菓子店では明日の大文字送り火(決して、「大文字焼き」ではない)にあわせたオリジナル商品を企画するのが流行のようだ。伊勢丹の地下などをうろつてみると、圧倒的に三笠(どら焼きとは呼ばない)型が多いことがわかる。食べやすさと作りやすさがポイントなのだろうか。「盆」から円形を連想することもできるし、焼き印を押してしまえば五山に仕立てることもできる。
 もともと送り火は旧暦の7月16日に行われていたもので、この日はかならず十六夜の月ということになっていた。西山に日が落ちる頃、東山からすがたをあらわす月。各家のかどでは送り火を焚いて先祖の霊を送り出し、その後、五山に火を灯す。この火と月とに導かれて、やがて精霊は西方浄土へと帰っていくという趣向だ。こうした事情をふまえるならば、三笠型の菓子は十六夜の月を象ったものともいえそうである。
 個人的には俵屋吉富の「送り火」がなかなかよくできていると感心した。また、鶴屋吉信の「山あかり」などは円形になっておらず、「山」を模していて他の店にはない形状がおもしろい。などといいつつ、日持ちがしないのでどちらも帰省土産に選べなかった。残念。