記号論的

 先日、悩めるKNさんに「文学の論文って何ですか」と尋ねられ、とりあえず「力のみせどころ?」と答えた。また、KNさんの横にいたKBさんは「自己主張」と自信を湛えながら言った。
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 朝から体調が思わしくなく、仕事にもならないので、ソファにだらしなく横たわりつつ読書する。深く考えずに読め、かつKNさんが答えをみつけるための手引きになるかもと、書庫から思い出したように漁ってきた本はこれ。

文学部唯野教授

文学部唯野教授

 ストーリーと講義の内容とがそれぞれに進んでいくようすに、ふと虎と龍を思い出す。また、かつて文学理論研究会なんてのをやっていたなぁ、懐かすぃ〜、などと「遠い目」になる。90年代半ばに生まれた学生が読んでも元ネタがわからないような部分もあるが、軽く読むには悪くはないか。
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 「深く考えず」に読んでいて、ふと思いつくことがあったので、メモしておく。
 C.S.パースがいうところの記号分類によって「名所図会」群の機能を説明するならば、類像=風景をありのままに描く挿絵・指標=名所に関連する和歌や発句、漢詩あるいは故事説話・象徴(性)=各地域の特質を反映させた編集スタイルにより、イメージの固定化を図る、となろう。また、「名所図会」群の出現により名所は記号化され、体系化された、といえる。「おらが国自慢」でなく、「差異の体系」としての「名所図会」群。
 あくまでも思いつきということで、ウダウダと考えながら過ごした、葉月初巳の日曜日。