土佐日記

 予、講義とて大学へ行きたるに、暇ありやと尋ねし人あり。あると返すに、彼の人、珈琲をば召せと言ふ。予の好物にて断る故もなし。熱き漆黒の汁、ひと口ふた口飲むほどに、甘味欲する心地す。何ぞ甘きものあらんと探すうち、奥にて小さき餅みつけたり。土佐日記と名づけられし其菓子、羽二重にて餡を包み、寒梅粉をまぶしたる。いたう美味なり。いまひとつと思ふに、すでになし。あな口惜し。