ニシオカ

 帰りの電車での出来事。
 向かいに座った若い女性は携帯電話でペラペラ喋りつつ、自販機で買った焼きおにぎりを食べている。その隣りに座った年輩の男性は、なぜか落ち着かないようすでソワソワしている。とにかくどちらも悪目立ちしているので、気になって仕方がない。
 そのうち男性の方がおもむろに靴を脱いで、中身を覗いたり、外観を眺めたりしだした。隣の女性は気にするでもなく、すぐ側でおにぎりを食べ続けている。
 しばらくして靴の観察を終えた男性は携帯電話を取り出し、知人らしき相手と話しはじめた。「新幹線、乗れたか」と切り出しつつ他愛もない話しをひととおりしてから、「お前の靴、お前のか?」と聞いた。そのうえで、「じゃあ、ニシオカやな。靴、間違えて履いて帰ったやろって伝えとって」と念を押して、電話を切った。
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 その後、5分ほどの間、笑いを抑えるのに必死で、何も覚えていない。