続・リハビリ

 何か書くときの小ネタを捜すのに、随筆が役立ってくれることが多い。近世期の随筆はもちろん、近代あたりのものもよい話題を提供してくれる。3年ほど前のこと、京都新聞の夕刊で巨椋池についてのエッセイを書いたのだが、そのときに使ったのが『和辻哲郎随筆集』だった。

和辻哲郎随筆集 (岩波文庫)

和辻哲郎随筆集 (岩波文庫)

(あ、編者が坂部恵…)
 干拓前の巨椋池に遊んだことが細かに記されていて、興味深い。江戸時代の地誌をみると、7月初旬まで見事な蓮を咲かせ、人びとの目を楽しませていたとある。この時期を逃すと盂蘭盆の供え物として収穫されてしまうため、蓮見には注意が必要だったらしい。また、根と飯を葉で巻いて蒸す蓮飯が名物で、和辻もこれを食したと記している。
 巨椋池干拓については諸説あり、食糧増産を目指したとか、マラリア予防のためだとかいわれている。そもそもここの池は宇治川の支流だったのを、豊臣秀吉の堤防工事によって流れが封鎖されてしまっていた。かつての姿を知る人に聞くと、澱みきった水は異臭もひどく、埋め立てるのが良策だったのだという。いまでは均一に区画整理された水田が広がっていて、往時をしのばせるものはほとんど残されていない。